──親父が死んだ。

父親の葬儀の喪主として立つ「倉敷 轍也(くらしき てつや)」は、すぐ傍で溢れそうに涙を必死に堪える一人の若い女性を、じっと見つめていた。


彼女の名前は「倉敷 葉月(くらしき はづき)」。

亡くなった父親の再婚相手であり、轍也の義理の母。
そして、轍也が淡い恋心を抱く、一目惚れの相手でもあった。

轍也は、相手は自分の義理の母となる人。
叶わぬ想いを抱いていても……と、家族として馴染んでいこうと決めた矢先に、父親が倒れたのだ。


「今日から葉月さんと二人っきりで暮らすのか……」

想いを寄せる女性と二人、同じ屋根の下で生活していくのに、不安と期待と罪悪感が入り混じる。

そんな中、隣の空き家に一人の女性が入居してくる。


彼女の名は「樫崎 夕香(かしざき ゆうか)」。

かつて幼い轍也と、父親を捨てて家を出て行った、轍也の母親だった。
偶然、息子の隣に住むこととなり、驚く夕香だったが、罪滅ぼしじゃないけれど、これからは母親として轍也を甘えさせたい。と、申し出てくる。

轍也は幼い頃に離れて以来会っていなかった夕香に、戸惑い・拒絶を抱くが、
同時に大人の女性を……異性を感じ始めていた。

こうして轍也は「今の母」と「昔の母」。二人の母と暮らしていくこととなる。

果たして轍也はどちらの「母」を、そして「女」を選ぶのだろうか?

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